アノテーションとは?——AIに学ばせるデータに「これは何か」の目印をつける作業のこと
結論
アノテーションとは、AIに学ばせる写真や文章などのデータに、「これは何か」という目印(正解)をつける作業のことです。AIは目印のついたデータをたくさん見ることで、目印のない新しいデータでも見分けられるようになります。ただし、すでにあるAIをそのまま使う場合は、アノテーションが必要ないことも多くあります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、アノテーションの意味と仕組み、AIを作る場面での使われ方、中小企業でアノテーションが必要になる場面とならない場面の見分け方、注意点と依頼前に確認することについて解説します。AIの導入を検討していると、「まずアノテーションが必要です」「アノテーション済みのデータはありますか」と言われることがあります。作業が必要らしいことはわかるけれど、何をするのか、自社でやらなければならないのか、よくわからない。そう感じている経営者や管理職の方も多いのではないでしょうか。この記事では、アノテーションとは何かを、たとえ話を使ってできるだけやさしく説明します。あわせて、アノテーションの仕組み、どんなときに出てくるか、中小企業で必要になる場面とそうでない場面の見分け方、外部に依頼する前に確認しておきたいことをまとめます。
ひとことで言うと:アノテーションは、AIのための「答えつきの問題集」を作る作業
アノテーションとは、AIに学ばせるデータに「これは何か」という目印をつける作業のことです。英語の「annotation(アノテーション)」は「注釈」「書きこみ」という意味です。目印のことは「ラベル」や「タグ」とも呼びます。
答えつきの問題集にたとえると
アノテーションは、テスト勉強のための問題集づくりにたとえられます。問題だけが並んでいて答えがない問題集では、自分の答えが合っているかわかりません。先生が一問ずつ答えを書きこんでくれれば、生徒は答え合わせをしながら力をつけられます。
AIも同じです。たとえば、部品の写真を1枚ずつ見せて、「これは良品」「これはキズあり」と答えを書きこんでおきます。AIはこの答えつきの写真をたくさん見て、良品とキズありの見分け方を覚えます。この「答えを書きこむ」作業がアノテーションです。
| 問題集のたとえ | AIの世界 |
|---|---|
| 問題 | 写真・文章・音声などのデータ |
| 先生が書きこむ答え | ラベル(「良品」「キズあり」などの目印) |
| 答えを書きこむ作業 | アノテーション |
| 問題集で勉強する生徒 | 学習中のAI |
| 本番のテスト | 目印のない新しいデータを見分けること |
ポイント
答えが間違っている問題集で勉強すると、生徒も間違えて覚えます。アノテーションでは、目印の正しさとそろい方が、AIのできを大きく左右します。
もう少しくわしく:アノテーションからAIができるまでの5ステップ
アノテーションを使ってAIを作る流れは、おおむね次の5つのステップで進みます。
- データを集める:AIに見分けさせたいものの写真や書類、文章を集めます
- 目印のルールを決める:「どこからをキズと呼ぶか」「この書類は請求書か見積書か」など、目印のつけ方を決めて文書にします
- 目印をつける:人がデータを1件ずつ見て、ルールどおりに目印をつけます。これがアノテーションです
- AIに学ばせる:目印つきのデータをAIに読みこませ、見分け方を覚えさせます
- 確かめて直す:学習に使っていないデータでAIを試し、間違いが多い種類があれば、データや目印を足して学ばせ直します
目印のつけ方にはいくつかの種類がある
| つけ方 | どんな作業か | 使われる例 |
|---|---|---|
| 分類 | データ全体に1つの目印をつける | 写真に「良品」「不良品」、メールに「注文」「問い合わせ」 |
| 囲み | 写真の中の、目印をつけたい場所を四角で囲む | 部品のキズの位置、写真に写った人や車 |
| ぬりわけ | 写真の中の形を、点の単位でぬりわける | 道路と歩道の境目、さびが広がっている範囲 |
| 文字への目印 | 文章の中の言葉に、種類の目印をつける | 書類の中の「会社名」「金額」「日付」 |
どんなときに出てくる?——AIを作る場面と、AIを使う場面
AIを作る場面
アノテーションがもっともよく出てくるのは、自社専用の見分けるAIを作るときです。AIの会社と話していると、次のような言い回しを耳にします。
- 「不良品の写真に、キズの場所を囲んだデータを用意してください」
- 「アノテーションのルール(作業の手引き)を先に決めましょう」
- 「アノテーションは外部の作業会社に依頼することもできます」
AIを使う場面
文章を作るAIや、書類を読み取るAIなど、すでにできあがったAIを使う場合は、提供会社が大量のデータで学習をすませています。そのため、使う側がアノテーションをする必要はないことが多いです。
ただし、AIの答えに「よい」「よくない」を人が評価して、改善に役立てる仕組みがあります。これも広い意味では、目印をつける作業の一つです。
よく一緒に出てくる言葉——教師データ・ラベル・ファインチューニングなど
アノテーションの話をしていると、次のような言葉もよく出てきます。ここでは名前と関係だけを押さえておきましょう。
| 用語 | ひとこと説明 | アノテーションとの関係 |
|---|---|---|
| ラベル | データにつける「これは何か」の目印 | アノテーションでつけるもの |
| 教師データ(学習データ) | AIに学ばせるための、答えつきのデータ | アノテーションをした結果できあがるもの |
| 機械学習 | データから見分け方や決まりをAIに覚えさせる方法 | アノテーションしたデータを使う代表的な方法 |
| ファインチューニング | すでにあるAIに、追加のデータで学ばせ直すこと | 追加するデータの用意にアノテーションが必要なことがある |
| 精度 | AIの答えがどのくらい正しいか | 目印の正しさが精度に直接ひびく |
仕事ではどう関係する?——アノテーションが必要な場面と、いらない場面の見分け方
中小企業がAIを使うときは、自社専用のAIを一から作るより、すでにあるAIを業務に合わせて使う場合がほとんどです。そのため、まずは「自社の業務でアノテーションが本当に必要か」を見分けることが大切です。
必要になる場面と、いらないことが多い場面
| 業務の例 | アノテーション | 理由 |
|---|---|---|
| 自社製品のキズや汚れを、写真で見分けたい | 必要になりやすい | 自社製品の「良品」と「不良品」の境目は、自社にしかわからないため |
| 独自の書類を、自社だけの区分で仕分けたい | 必要になることがある | 区分のしかたが自社独自で、例を見せないと伝わらない場合があるため |
| メールの返信の下書き、議事録の要約 | いらないことが多い | すでにある文章のAIに、指示と手本を渡せば対応できる場合が多いため |
| 請求書や注文書の読み取り | いらないことが多い | すでにある読み取りのAIで対応できる場合が多いため |
見分けるコツは、「その判断の基準が、自社の中にしかないかどうか」です。基準が一般的なものなら既存のAIで足りることが多く、自社だけの基準なら目印つきの例が必要になりやすくなります。
注意点
- ルールのばらつき:作業する人によって目印のつけ方がちがうと、AIが迷います。迷う例をルールに書き足します
- 手間と時間:目印は人が1件ずつつけるため、データが多いと時間がかかります。最初は小さく試します
- かたより:良品の写真ばかりで不良品が少ないなど、データにかたよりがあると、見分ける力が育ちにくくなります
- 情報の扱い:外部に作業を頼む場合、顧客の情報や社外秘の写真を渡してよいか、契約や社内ルールで確かめます
アノテーションを依頼・導入する前のチェックリスト
- 見分けさせたいことは、既存のAIでは対応できないか試したか
- 見分ける基準(良品と不良品の境目など)を、言葉や見本で説明できるか
- 目印をつけるためのデータ(写真や書類)が、どのくらい手元にあるか確認したか
- 目印を誰がつけ、誰が正しさを確かめるか決めたか
- 外部に渡してよいデータかどうか、社内ルールで確認したか
- できあがったAIの見分けが間違ったとき、人がどう確かめるか決めたか
専門的な補足
アノテーションしたデータで学ばせる方法は、専門的には「教師あり学習」と呼ばれます。最近は、少ない例を指示の中で見せるだけで、既存のAIがある程度見分けられる場合もあります。そのため、まず既存のAIに数件の手本を渡して試し、足りなければアノテーションに進む、という順番が現実的です。
大切なのは、アノテーションという言葉を覚えることより、どの業務のどの手間をなくしたいかをはっきりさせることです。目的が決まれば、既存のAIで足りるのか、目印づけが必要なのかも自然と見えてきます。
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よくある質問
アノテーションとは簡単に言うと何ですか?
AIに学ばせる写真や文章に、「これは何か」という目印(正解)をつける作業です。AIの勉強用の、答えつきの問題集を作る作業だと考えるとわかりやすくなります。
アノテーションとラベリングの違いは何ですか?
ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。データに目印(ラベル)をつける作業を、アノテーションともラベリングとも呼びます。
ChatGPTのようなAIを使うのに、アノテーションは必要ですか?
多くの場合は必要ありません。提供会社が学習をすませているため、使う側は指示や手本を工夫すれば足りることがほとんどです。自社だけの基準で見分けさせたい場合に、検討することになります。
アノテーションは自社でやるべきですか?外部に頼めますか?
外部の作業会社に頼むこともできます。ただし、見分ける基準は自社にしかわからないことが多いため、ルールづくりと正しさの確認には自社の担当者が関わることをおすすめします。